7月1日、午前10:00
全社員、真新しい制服に身を包み
辞令交付式を執り行いました。
これまで私が女将として現場管理責任者の任を務めて参りましたが、7月1日を持ちましてその職を辞し
ベルグハウスが今後どう進むべきかと奔走する私共夫婦の傍らに10年に渡り付いてきてくれたJさんこと
深田隼平くんにゼネラルマネージャーの任を命じ、
彼にベルグチームを託すことと決意いたしました。
加えて、
機械に強く、DIYがお得意、大型バスの運転も除雪車の操作もお得意で、社長が抱えていたたくさんの営繕業務を一手に引き受けてきてくださったかめさんは
施設マネージャーに。
サービス提供者として兼ね備えていなければならないものすべて身につけている私の右腕sonoちゃんは、スタッフの育成と更なるベルグのサービス向上に尽力していただきたく、
サービスマネージャーに。
広い視野とテキパキと動く手の速さはピカイチ!その力はルーム、キッチン、レストラン、フロント、どこへ行っても発揮される、優秀なホテルウーマンtomoちゃんは
ルームマネージャーに。
新しく四人のマネージャーが誕生いたしました。
『女将の指示のもと動く』という従来の宿業から、
サービスのプロが各々主体的に考え”自ら動く”という働き方ができる、そして
マネージャーが協力しあい、メンバーの力を引き出して「活きのいい職場」を自ら作り出せる、
そんな会社となるために
新たな新体制を構築することといたしました。
『家業から企業へ』
12年前に夫婦で掲げた目標でした。無謀だと思ったときもありました。
でも。
本日その目標が、達成されることとなったのです。
夢は必ず叶うのだと、
晴々しい想いでいっぱいです。
12年前の冬、娘が生まれました。
夏前にはおじいちゃんおばあちゃんは山小屋へ行ってしまい、お座りできるようになった娘を抱え初めての子育てをしながら、朝から晩まで必死にベルグの仕事をこなしていました。
大学生のアルバイトと一緒に何とかお盆を越え「あぁ、今夜からお客様が少なくなる、今夜の仕込みも終わった、よかった・・・」そう思った瞬間、
私は意識を失い倒れました。
救急車が来て、主人が同乗してくれ発車。栂池の端まで来た時、彼は気づきます。
「もうすぐチェックインの時間だ」
アルバイトだけを残して遠くの病院まで行ってしまったら、今夜のお客様が困ってしまう。
「止めてください。ここで降ります!」
(・・・えっ?)
「後で行くから。優、後で行くからね!」・・・ダン!
救急車の扉が閉められた瞬間、
涙がツーっと。
わかってはいたはずだけど。。。
こういうことだよね。商売屋に嫁ぐってのはこういうことだよね・・・
これが私達夫婦の中で大変大きな分岐点となりました。
置いていかれた側も、置いていかなければならなかった側も、深く深く傷つきました。
こんな、夫婦のどちらかに何かあったら終わりのような綱渡りみたいなやり方してていいわけがない!
そこで定まった目標が『家業から企業へ』でした。
あれから12年。
文字通り『奔走』してきました。
お父さんお母さんから「このベルグの通帳と印鑑を渡します」と言われた日、私は腹をくくりました。
看護職に対する未練も封印し、お父さんお母さんが想いを込めて作り必死に守ってきたこのベルグハウスを
どんなことをしても守り抜くのだと。倒すわけにはいかないと。
それが私の第二の人生なんだと。
守るには、
捨てなければならないものも、変えなければならないこともたくさんありました。
誤解されたり、お叱りを受けることもありました。
だからこそ、絶対に守らなければならないものもはっきり見えてきました。
とにかくまずは、あちこちからちょっとづつ出血し続けているベルグをなんとか止血しなければいくら輸血してもダメだと、ひたすら出血箇所を見つけては徹底的に止血。
つまり「見たくない現実を見ること」これにつきました。
さて。輸血は・・・何をすればお客様は来てくださるのか。
今までと同じことをただしていたんではいずれ必ず倒れる。
では何をすればいいのか?今のお客様は何を求めているのか?
必死に考え、学び、トライし、突き進んだり引き返したり方向転換したり、グッと突っ込んでみたり。
トライ&エラーを繰り返す日々・・・
スタッフみんな、
本当によくついてきてくれたと思います。
繁忙期に集まるバイトちゃんも同じ。とてつもなく厳しい条件の時代も長かったのですが、そんな時代の子達との方が家族のような繋がりで今もいられて、
大変幸せに思います。
家業から企業へと向かうにあたり私が「第一にすべき」と考えたのは
『従業員に愛される宿になること』でした。
ここで働きたい、ここへ私の大事な家族や友人を連れてきて働いてる私を見せたい、
安心して長く継続して働ける環境を整えてあげることだと思い、一つ一つ積み上げてきました。
それがお客様のもとへ、スタッフ一人一人から発せられる自信を持った温かなサービスとして必ず届くと思ったからです。
お金がない時代には工夫することを身につけました。
ルールがあるから人に教えられるんだということも知りました。
40年前に栂池最初の鉄筋コンクリートの建物として誕生したベルグハウスはいつのまにか栂池で最も古い建物となり、あちこち痛みや不具合が目立つようになりました。
故障するところを直しながらも、またこの先30年40年安心して使えるようにするにはどうするのが一番効果的なのか。
どうせ壊して直さなければならないのなら一石二鳥じゃ割に合わない、一石五鳥六鳥となるようなリニューアル工事をせねばととにかく工夫し知恵を絞り、
地下1階~4階まで全フロア、10年かけて一通りの修繕工事を無事終えることができました。
スタッフ全員が少しづつキレイになっていくベルグが嬉しくて。
それにふさわしいサービスが何かを積極的に考え、
「こんなことしたらどうだろう?」「こんなものがあったらどうだろう?」アイデアがたくさん出てくる空気が出来上がりました。
社長が「お!それいいじゃん♪やってみよう」と言ってくれるとうれしくて。みんなからどんどん泉が湧くようにアイデアが出てくるようになりました。
新ベルグ誕生にふさわしい、新しい制服を作ろう!みんなで考えて選んでごらんよ♪
そうして決まったのが今回の女性スタッフの制服です。
上司からの指示だからやるのではなく、働く者の心から生まれたことは
守られるだけでなく、育っていきます。
これからも志同じく働ける仲間を求めながら、
スタッフ一丸となって、足をお運びいただいたお客様に安心安全と心地よい時間を提供して参ります。
必ずやベルグを、更に皆様に愛される
オンリーワンの宿へと育てていきます!
そして私は
そんなベルグスタッフをこれまで以上に必死に守り、持っている力を最大限引き出せるよう努めて参ります。
引退は、新たなステージへの出発です。
いつだってベルグが最優先で一番蔑ろにしてきてしまった、主人、子供たち、お父さんお母さん、そして私自身を想う時間も、これからは守っていきたいと思っています。
最後に
このような濃密な時を重ね、人としての成長ができましたのも
潔く若い私達に渡し、すっと手を引いて、じっと黙って見つめ続けてくださったお父さんお母さんのおかげだとつくづく感じております。
そんなことするなとか、やめとけとか、ダメだとか、一度として言われたことはありません。
「お前達がそう思うならやってみりゃいいじゃねぇかい」
いつもそう言ってくださいました。
自分たちが想いを込めて作ったものが、壊されたり形を変えたりすることは辛いことも多かったはずです。私達も辛いことがたくさんあったのですから、当人は尚更だと思います。
お父さんお母さんの潔さ、深さに。
そして、どんな時も私の体を案じ、
不器用で真っ直ぐにしか進めない私に、どこへ向かって走るかを見失わないよう気長に導いてくれた旦那様に
心より感謝申し上げます。
どうぞ皆様これからも、新生 白馬ベルグハウスを
引き続き宜しくお願いいたします。
さて!
午後からはベルグ大同窓会です♪
楽しみ過ぎて、なんだかちっとも落ちつきません(笑)