縁の下の力持ち

1日遅れまして無事に今年最後の船窪小屋への荷揚げが終わりました!

 

荷揚げの準備には何日も要します。

今年初めて荷造りに一緒に携わってくださった亀さんも今季3度目ともなると慣れたもので、自らどんどん進めてくださいました。

社員のJさんも長年傍で見てきていろんなことをわかってくれていて、気づけば黙って動いてくれていて、すっかり頼りにしています。

亀さんは定年退職後昨冬からベルグへいらしてくださいました。機械に強く、重機やバスにも乗れ、館内の細かな修繕等社長しかできなかったことを一手に引き受けてくださり、亀さんが来てくださってまさに鬼に金棒です♪

また多くの人材を育ててきた経験とその温厚な人柄とで、若い者達を叱咤激励しながらそっと守り育ててくださっており、本当に有り難い存在です♪

日々のベルグでの仕事もちゃんとこなしながらも、追加注文が山から届く度嫌な顔ひとつせず何度も買い出しに出てくださいました。

とはいえ、何日もかけて依頼された品物を確実に揃え、箱詰めし、計量し、落ちのないようきちんと揃えていく・・・時間と体力のいる作業です。

私もこれまで10年以上ずっとやってきましたが、山のような買い物を大きなカートを2台両手で押しながら、スーパーを何軒もはしごしてかき集めるのは本当に大変です。

電気がない山小屋ですから冷蔵庫も冷凍庫もありません。なるべく日持ちすりものを選び、開封しても大量消費できる日ばかりではありませんから大容量の業務用品ではなく家庭用の個包装のものをたくさん用意する必要があります。

時には売り場に並んでいるだけの品物を買い占めないといけないときもあったり

山盛りの籠を差し出すレジでは後ろの方に嫌な顔をされることも(笑)

 

でも、

船窪小屋のお客様もベルグハウスのお客様もどちらも同じ大切なお客様。

船窪小屋の営業を支えるのもベルグの大切な役目であることをみんな承知してくれていて、積極的に縁の下の力持ちを実践してくれています。

この夏も、長野朝日放送さんが船窪小屋の撮影に入っています。

船窪小屋は主人の両親の生き甲斐の場所です。「80を迎える今年を最後にする」とおかあさんはそう言って今年も山へ行きました。

これまでも『老夫婦とその二人を慕う人々とが大切に守る天空の山小屋』としてテレビや雑誌の取材を受けることが何度もありました。

しかし、そこに姿はなくとも遠く離れた下界から小屋を支える縁の下の力持ち達の存在は、あまり触れられたことはありません。

今回初めて、

ひっそりと小屋を支え続けてきたベルグのみなさんの姿をぜひ見せてほしいと

荷揚げの様子を撮影に来てくださいました。

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山小屋経営には大切な使命があります。

宿泊客が来ようが来なかろうが、そこにいる、そこにあることが最大の使命です。

登山者の安全を守り、安心を提供し、疲れた体を癒して次の山行に送り出す、

たとえたった1人のお客様でも。

予約もなく飛び込んできたとしても。

連絡もなく来なくなったとしても。

食事も終わったような遅い時間に飛び込んできたとしても、すべての方を受け入れ食事と寝床を提供する。

それが、山小屋の使命です。

それを実践するとは、物も設備も揃った下界の宿泊業とは違う苦労があるだろうことは、想像力を駆使しても余りあると思います。

山水を汲むことから始まり、文明の利器なき場所で古くからの知恵を生かし、高齢の両親を支えながら100日間を共に生きてくれる山小屋スタッフヒロちゃん・シノブちゃんの存在無くして、船窪小屋の日々はありません。

そして両親を慕い山頂まで何度も足を運んでくださる「道しるべの会」のみなさんの深い愛情に、船窪小屋は守られています。

だからこそ、我々は下界から文字通り縁の下の力持ちを率先して行ってきました。

一度に何百人も泊まれるような有名な山小屋さんとは違い、私どもの船窪小屋は50名も泊まればいっぱいの小さな小屋。

未だ発電機も持ち込まず、ランプの明かりと囲炉裏のぬくもり、お客様を想う心とおもてなしでお迎えする

北アルプスに小さくもどっしりと佇む山小屋です。

狭い小屋内が人で溢れる大賑わいの日もありますし、

誰一人訪れない静かな日もあります。

メジャーなコースとは外れた場所で営む小さな山小屋の経営は、決して楽なものではありません。

『船窪小屋には確かに素晴らしいストーリーがある。しかし理想や想いだけではどうにもならない「現実」という部分から逃れることなく、じっと引き受け、そっと支えている人が必ずいるはず』

そんなふうに、息子である二代目オーナーの”秘めたる想い”に気づいてくださったメディアの方は、今まで一人もいませんでした。

撮影クルーの皆様は荷揚げ完了後移動一時間以上かかる道のりをわざわざベルグハウスまでいらしてくださいました。

sayaとsonoちゃんがかわいい笑顔で丁寧に皆さんを迎えてくれ、

旦那さまはテラスでインタビューを受けていました。

その姿をラウンジのカウンターからそっと一人眺めていると「なんだか・・・報われた気持ちになりましたね、優さん♪」とsonoちゃんがいつもの優しい笑顔で語りかけてくれました。

「ねっ♪」

じつは、じーんと胸も目頭も熱くなり、一瞬それしか答えられませんでした。

 

我々は縁の下の力持ち。

船窪小屋とベルグハウスはお互いに支え、支えられながら、2つの施設が自力で立ってやっと一人前の会社。

それでも我々夫婦には、ベルグと船窪両方のスタッフ全員とその家族も含めた、私達のこの大きな大きな家族全員を食べさせていくという責任がある。

改めて私自身のすべきこと、

持たねばならない強さ、そして

日々労を惜しまずいきいきと働いてくださるスタッフみんなの存在を感じ直す

大切な1日となりました・・・

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